日本情報オリンピック(JOI)という名前を聞いたことはあるけれど、小中学生でも参加できるのか、どんな大会なのか分からないという保護者の方も多いのではないでしょうか。名前だけ聞くと、とても難しそうなイメージがありますよね。
日本情報オリンピックは、アルゴリズムとプログラミングの実力を競う国内最高峰のコンテストです。高校生が中心の大会ですが、実は年齢制限はなく、小学生や中学生でも参加できます。実際に小中学生の参加者も年々増えており、予選段階では基礎的な問題から出題されるため、挑戦のハードルは想像よりも低いです。
この記事では、日本情報オリンピックの大会概要と予選の内容、小中学生が挑戦するために必要な準備と対策方法を具体的に解説します。お子さんのプログラミング学習のさらなるステップアップとして参考にしてください。
日本情報オリンピック(JOI)とは
まず、日本情報オリンピックがどのような大会なのか基本情報を整理します。
大会の概要
日本情報オリンピック(JOI:Japanese Olympiad in Informatics)は、情報オリンピック日本委員会が主催する、プログラミングとアルゴリズムの実力を競う大会です。国際情報オリンピック(IOI)の日本代表選考を兼ねた大会でもあり、日本における競技プログラミングの登竜門として位置づけられています。
大会は複数のステージに分かれています。一次予選はオンラインで行われ、自宅のパソコンから参加できるため、全国どこに住んでいても気軽にエントリーできます。
大会の流れ
- 一次予選(オンライン):誰でも参加可能。基礎的な問題が中心
- 二次予選(オンライン):一次予選通過者が参加。やや難易度が上がる
- 本選(会場):上位者が参加。高度なアルゴリズムの知識が必要
- 春合宿・代表選考:トップクラスの実力者が集まる選考会
参加資格
参加資格に年齢制限はありません。ただし、国際情報オリンピック(IOI)の日本代表に選ばれるのは高校生以下に限られています。小中学生の場合は、まず一次予選で問題を解く経験を積むことが最大の目標になります。一次予選だけでも参加する価値は十分にあります。

JOIに必要なスキル
JOIに参加するためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
テキストプログラミング言語の習得
JOIの問題はプログラミング言語でコードを書いて解答します。使用できる言語は主にC++、Python、Javaなどです。小中学生の場合、Pythonから始めるのがもっとも取り組みやすいでしょう。Pythonは文法がシンプルで、少ないコード量でプログラムを書けるため、初学者に適しています。
ただし、高いレベルを目指す場合はC++の習得も視野に入れておくとよいです。C++は実行速度が速く、競技プログラミングの世界では標準的に使われている言語です。
アルゴリズムの基礎知識
JOIの問題はプログラミング言語の文法だけでは解けません。「与えられた問題をどのような手順で解くか」を考えるアルゴリズムの知識が必要です。
一次予選レベルで求められるアルゴリズムの基礎は以下のようなものです。
「全探索」はすべての場合を一つずつ試す方法で、最も基本的なアルゴリズムです。「ソート」はデータを順番に並べ替える方法で、Pythonでは組み込みのsort関数を使えます。「条件分岐と繰り返しの組み合わせ」は、複数の条件を判定しながらデータを処理する基本パターンです。
数学的な思考力
JOIの問題は数学的な考え方を必要とするものが多いです。四則演算はもちろん、割り算の余り(剰余演算)、最大公約数・最小公倍数、座標の計算などが頻出します。小学校の算数で習う内容をしっかり理解していれば、一次予選の多くの問題に対応できます。
小中学生向けの対策ステップ
プログラミング初心者の小中学生がJOIに挑戦するまでの具体的なステップを紹介します。
ステップ1:Pythonの基本文法を学ぶ(1〜2ヶ月)
まずはPythonの基本文法を身につけましょう。最低限必要な知識は以下のとおりです。
- 変数への代入と四則演算
- 入力の受け取り(input関数)と出力(print関数)
- 条件分岐(if, elif, else)
- 繰り返し(for, while)
- リスト(配列)の基本操作
- 文字列の操作
学習教材としては、AtCoderのプログラミング入門教材(APG4b)がおすすめです。競技プログラミングに必要な知識を体系的に学べる無料の教材で、実際にコードを書きながら進められます。
ステップ2:簡単な問題を解く練習をする(2〜3ヶ月)
基本文法を学んだら、実際に問題を解く練習に移ります。AtCoderというオンラインジャッジサイトでは、難易度別に分類された膨大な問題が公開されており、自分のレベルに合った問題を選んで練習できます。
AtCoder Beginner Contest(ABC)のA問題・B問題は入門レベルで、JOIの一次予選レベルの基礎力を養うのに最適です。まずはA問題を20〜30問解いてみましょう。そのあとB問題に進み、慣れてきたらC問題にも挑戦します。
ステップ3:JOIの過去問を解く(1〜2ヶ月)
AtCoderの問題に慣れてきたら、JOIの過去問に取り組みます。情報オリンピック日本委員会の公式サイトでは過去の予選問題が公開されており、実際の出題形式や難易度を確認できます。
一次予選の問題は全5〜6問構成で、前半は比較的やさしく、後半に向けて難易度が上がります。最初の2〜3問を確実に解けるレベルを目標にするのが現実的です。

一次予選の問題の特徴と攻略法
一次予選で出題される問題のパターンと、それぞれの攻略法を解説します。
入力・出力の基本問題
最初の1〜2問は、入力されたデータを指定された形式で出力する基本的な問題が多いです。たとえば「3つの数値を入力して合計を出力する」「文字列を逆順に出力する」といった内容です。
ここで注意すべきは入出力の形式です。問題文に書かれた入力形式と出力形式を正確に守らないと、正解のプログラムでも不正解として判定されます。余計なスペースや改行に気をつけましょう。
条件分岐を使う問題
「ある条件を満たすかどうかを判定する」タイプの問題も頻出です。たとえば「与えられた年がうるう年かどうかを判定する」「テストの点数に応じて成績を出力する」といった問題です。複数の条件を組み合わせるケースもあるため、条件の優先順位を正しく設定できるかがポイントになります。
繰り返しを使う問題
「N個のデータの中から条件に合うものを数える」「N回の操作の結果を求める」など、繰り返し処理を使う問題も定番です。for文を使ったカウント処理、合計の計算、最大値・最小値の探索などをスムーズに書けるようにしておきましょう。
シミュレーション問題
問題文に書かれたルールどおりにプログラムを組んで、結果を出力するタイプの問題です。問題文が長くなることがありますが、落ち着いて読み、ルールを正確にコードに落とし込むことが大切です。
JOIの問題は「プログラムが正しい答えを出力するか」が自動で判定されます。部分点が設定されている問題もありますが、基本的にはすべてのテストケースに正解する必要があります。効率の悪いプログラムだと、制限時間内に処理が終わらない(TLE:Time Limit Exceeded)場合があるため、処理速度にも注意が必要です。
おすすめの学習リソース
JOI対策に役立つ教材やWebサイトを紹介します。
書籍
「プログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造」は、競技プログラミングの基礎を体系的に学べる定番書です。中学生以上であれば読み進められる内容です。
Pythonでプログラミングの基礎を学ぶなら「Pythonで学ぶプログラミングの基礎」のような入門書から始めるとよいでしょう。
オンラインジャッジサイト
AtCoder以外にも、Aizu Online Judge(AOJ)では情報オリンピックの過去問が多数公開されています。Aizu Online JudgeはJOI専用の問題セットも用意されており、過去問演習に最適です。
コミュニティ
競技プログラミングのコミュニティは活発で、分からない問題があったときにネット上の解説記事やYouTubeの解説動画を参考にできます。AtCoderの問題については、多くのユーザーが解法を公開しているため、解けなかった問題の理解を深めるのに役立ちます。

保護者ができるサポート
小中学生がJOIに挑戦するにあたって、保護者のサポートが重要になる場面があります。
学習環境の整備
Pythonの実行環境をパソコンにセットアップする作業は、小学生には難しい場合があります。Pythonのインストール、テキストエディタ(Visual Studio Codeなど)の設定、ターミナルの使い方などを一緒に準備してあげましょう。
モチベーションの維持
JOIの問題は、プログラミング教室やScratchとは異なるレベルの難しさがあります。解けない問題が続くとモチベーションが下がりやすいので、「解けた問題の数」や「前回より進歩した点」に注目して声をかけてあげることが大切です。
大会当日のサポート
一次予選はオンラインで行われるため、自宅で受験できます。安定したネット環境を確保し、試験時間中は静かに集中できる環境を用意してあげましょう。パソコンのトラブルに備えて、保護者も近くにいるようにすると安心です。
よくある質問



