「プログラミング教育に興味はあるけど、うちにパソコンがない」「画面ばかり見せたくないけど、プログラミング的思考は育てたい」と考えている保護者の方に知ってほしいのが、アンプラグドプログラミングです。
アンプラグドプログラミングは、パソコンやタブレットを一切使わずに、カードや身体の動き、紙と鉛筆だけでプログラミング的思考を育てる学習方法です。特別な機材も不要で、今日から家庭で始められます。
この記事では、アンプラグドプログラミングの基本的な考え方と、親子で楽しめる具体的な遊び方を多数紹介します。

アンプラグドプログラミングとは
アンプラグド(unplugged)は「プラグを抜いた」という意味で、電子機器を使わないプログラミング教育のことを指します。
アンプラグドプログラミングの目的
アンプラグドプログラミングが育てるのは「コードを書く技術」ではなく、プログラミング的思考(コンピューテーショナル・シンキング)そのものです。具体的には以下の力を養います。
- 順序立てて考える力(順次処理)
- 条件に応じて判断する力(条件分岐)
- 繰り返しのパターンを見つける力(ループ)
- 大きな問題を小さく分ける力(分解)
- 共通パターンを見つける力(パターン認識)
- 本質を抜き出す力(抽象化)
アンプラグドプログラミングのメリット
- パソコン・タブレット不要で費用がかからない
- スクリーンタイムを気にせず学べる
- 身体を動かしながら学べる
- 親子・兄弟・友達と一緒に楽しめる
- 幼児から大人まで年齢を問わず取り組める
- 特別な知識がなくても保護者が教えられる
どんな場面で使える?
アンプラグドプログラミングは以下のような場面で活躍します。
- 雨の日の室内遊び
- 長距離移動中の車内(カードゲームとして)
- プログラミング教室に通う前の導入
- 学校の授業の予習・復習
- 親子のコミュニケーション時間

手作りのカードでも十分ですが、命令カードやマス目のボードが最初からそろった市販のアンプラグド教材もあります。準備の手間を省きたい場合や、ルールの作り方の見本がほしい場合に選ばれています。
家庭で今日から始められるアンプラグドプログラミング遊び
特別な準備がほとんど不要で、すぐに始められる遊びを紹介します。
遊び1:ロボットごっこ(対象:3歳〜)
1人が「プログラマー」、もう1人が「ロボット」になる遊びです。
やり方:
- 部屋の中にゴール(お気に入りのおもちゃなど)を置く
- プログラマー役が「3歩前に進んで」「右を向いて」「2歩前に進んで」と命令を出す
- ロボット役は命令通りにしか動けない(勝手に方向を変えたりできない)
- ゴールに無事たどり着けたらクリア
「曖昧な命令ではロボットは動けない」ということを体感することで、正確な指示を出す力(=プログラミングの基本)が身につきます。
応用として、途中に障害物を置いて「もし壁にぶつかりそうなら止まる」という条件分岐の要素を追加するのも楽しいです。
遊び2:命令カードで迷路攻略(対象:4歳〜)
紙に簡単な迷路を描き、命令カードを使ってキャラクターをゴールまで導く遊びです。
準備するもの:
- 方眼紙やマス目のある紙(5×5程度のマスを描く)
- 命令カード(紙に「↑前進」「→右を向く」「←左を向く」と書いたもの)
- スタートとゴールの目印(シールや小さなおもちゃ)
やり方:
- マス目上にスタートとゴールを設定する
- 途中に壁(通れないマス)を置く
- 命令カードを並べて、スタートからゴールまでのルートをプログラミングする
- 並べた通りにキャラクターを動かして、ゴールにたどり着けるか確認する
間違えたら「どのカードを変えればいいか」を考えることで、デバッグ(バグ修正)の考え方にも触れられます。
遊び3:ダンスプログラミング(対象:4歳〜)
身体を動かしながらプログラミングの概念を学ぶ遊びです。
やり方:
- 動きのカードを作る(「ジャンプ」「手を叩く」「回る」「しゃがむ」「手を上げる」)
- カードを好きな順番に並べる
- 並べた順番通りにダンスする
- 「繰り返しカード」を追加して、同じ動きを3回繰り返すなどの要素を入れる
身体を使うことで、順次処理や繰り返しの概念を体感的に理解できます。音楽をかけながらやると、さらに楽しくなります。
まだ言葉での説明が難しい年齢なら、物語の中で「順番どおりに進む」感覚に触れられるプログラミング絵本から入る方法もあります。読み聞かせの延長で取り入れられます。

遊び4:お料理プログラミング(対象:5歳〜)
料理の手順を「命令」として整理する遊びです。実際に料理をする必要はなく、手順を考えるだけでOKです。
やり方:
- 子供に「サンドイッチの作り方を教えて」と聞く
- 子供が言った手順をカードに書いていく
- 「パンを取る」「ハムを乗せる」「チーズを乗せる」「パンを乗せる」など
- 順番を入れ替えたらどうなるか考えてみる(「パンを乗せてからハムを乗せたら?」)
「手順の順番が大事」「順番を変えると結果が変わる」ということを日常の中で学べます。
遊び5:宝探しアルゴリズム(対象:5歳〜)
家の中に宝物を隠し、見つけるための「アルゴリズム(手順書)」を作る遊びです。
やり方:
- 保護者が家のどこかにお菓子やシールを隠す
- 「リビングのドアを開ける」「3歩前に進む」「右を向く」「棚の2段目を見る」のような命令を紙に書く
- 子供は書かれた命令通りにだけ動いて宝物を探す
役割を交代して、子供が「命令書を書く側」になるとさらに効果的です。相手にわかるように手順を書く力=プログラミング力そのものです。
遊び6:並び替えゲーム(ソーティング)(対象:6歳〜)
カードを並び替えるルールを決めて実行する遊びです。コンピュータの「ソート(並び替え)」の概念を体験できます。
やり方:
- トランプや数字カードを5〜10枚ランダムに並べる
- 「隣り合う2枚を比べて、大きい方を右にする」というルールで並び替える
- 端から端まで1回通したら最初に戻って繰り返す
- 全部小さい順に並んだら完成
これは「バブルソート」と呼ばれるコンピュータの基本的なアルゴリズムです。「コンピュータもこうやって数字を並び替えてるんだよ」と伝えると、コンピュータの仕組みへの興味が芽生えます。
こうした「命令を並べて動かす」遊びをボードゲームの形にしたものもあります。カードを並べてコマを進めるタイプなら、家族で対戦しながら順次処理と手直しの流れを繰り返せます。
遊び7:条件分岐じゃんけん(対象:5歳〜)
じゃんけんに条件分岐の要素を加えた遊びです。
やり方:
- 事前に「もしグーで勝ったら→ジャンプ」「もしパーで勝ったら→回る」「もし負けたら→しゃがむ」「もしあいこだったら→もう一回」とルールを決める
- じゃんけんをして、結果に応じた動きをする
- ルールを増やしていく(「もし2回連続で勝ったら→バンザイ」など)
「もし〜なら〜する」という条件分岐(if文)の考え方を身体で覚えられる遊びです。

アンプラグドプログラミングで学べるプログラミングの概念
上記の遊びで触れられるプログラミングの概念を整理します。
| 概念 | 意味 | 対応する遊び |
|---|---|---|
| 順次処理 | 命令を上から順番に実行する | ロボットごっこ、命令カード迷路 |
| 条件分岐 | 条件に応じて違う動きをする | 条件分岐じゃんけん、ロボットごっこ応用 |
| 繰り返し | 同じ処理を何度も実行する | ダンスプログラミング |
| アルゴリズム | 問題を解くための手順 | 宝探し、並び替えゲーム |
| デバッグ | 間違いを見つけて直す | 命令カード迷路(間違えたとき) |
| 抽象化 | 複雑な情報から本質を抽出する | お料理プログラミング |
アンプラグドプログラミングの効果を高めるコツ
「なぜそうなったか」を言葉にさせる
遊びの結果(成功も失敗も)に対して「どうしてうまくいったと思う?」「どこを変えたらうまくいくと思う?」と質問しましょう。思考を言語化する習慣がつくと、論理的思考力が加速的に伸びます。
失敗を「バグ」と呼んで楽しむ
「間違えちゃった」ではなく「バグが見つかった!直そう!」と表現を変えるだけで、失敗に対するネガティブな感情が薄れます。プログラマーにとってバグ修正は日常的な作業であり、失敗は学びの一部だという感覚を育てましょう。
難易度を子供に合わせて調整する
簡単すぎると飽き、難しすぎると投げ出します。子供が「ちょっと考えればできる」レベルに設定し、成功体験を7割、チャレンジを3割くらいの割合にするのが理想です。
日常生活に自然に組み込む
わざわざ「プログラミングの勉強をしよう」と構えなくても、日常の中に取り入れられます。「お風呂に入る手順を教えて」「朝の支度の順番を紙に書いてみよう」など、生活の中で順序立てて考える場面を活用しましょう。

アンプラグドからデジタルへの橋渡し
アンプラグドプログラミングで基礎的な考え方が身についたら、デジタルツールへの移行もスムーズです。
ステップ1:Viscuit(ビスケット)
4歳から使えるビジュアルプログラミングアプリです。自分で描いた絵を「メガネ」というルールで動かします。アンプラグドで学んだ「こうしたらこう動く」の概念をそのまま画面上で実践できます。
ステップ2:ScratchJr
5〜7歳向けのプログラミングアプリです。ブロックを並べてキャラクターを動かすので、命令カード迷路の経験が直接活きます。
ステップ3:Scratch
8歳以上向けのビジュアルプログラミングツールです。アンプラグドで学んだ順次処理・条件分岐・繰り返しの概念をすべてブロックで表現できるため、アンプラグドの経験がある子はスムーズにScratchを使いこなせます。
Scratchに移るタイミングで、画面写真つきの子ども向け入門書を1冊用意しておくと、親が操作を教えられなくても子供が自分でページを追って進められます。
アンプラグドプログラミングは「デジタルの代わり」ではなく「デジタルへの入り口」として最も効果を発揮します。アンプラグドで概念を理解してからデジタルに移行すると、つまずきが大幅に減ります。
Q&Aコーナー
Q. アンプラグドプログラミングだけで十分?パソコンを使った学習は不要?
アンプラグドプログラミングは「考え方」を学ぶには十分ですが、実際にプログラムを書く技術を身につけるにはデジタルツールも必要です。小学校に上がる前はアンプラグド中心、小学生になったらデジタルとアンプラグドを併用するのが理想的です。
Q. 何歳から始めるのがいい?
ロボットごっこやダンスプログラミングは3歳から楽しめます。命令カード迷路や宝探しは4〜5歳から。並び替えゲームは6歳頃から理解できるようになります。子供の発達に合わせて遊びを選びましょう。
Q. 学校の授業でもアンプラグドプログラミングはやっている?
はい。小学校のプログラミング教育では、パソコンを使わないアンプラグド活動も取り入れられています。特に低学年の導入段階では、アンプラグドな活動から始める学校が多いです。家庭で先に体験しておけば、学校の授業でもスムーズに取り組めます。
Q. 親にプログラミングの知識がなくても教えられる?
もちろん教えられます。アンプラグドプログラミングに必要なのはプログラミングの知識ではなく、「一緒に楽しむ姿勢」です。親自身も「こうしたらどうなるかな?」と一緒に考えながら遊ぶことで、子供の学びはより深まります。
まとめ
- アンプラグドプログラミングはパソコン不要・無料で始められる
- 「順序・条件分岐・繰り返し」の概念を遊びながら学べる
- ロボットごっこ・命令カード迷路・ダンスプログラミングが入門に最適
- 失敗を「バグ」と呼んでポジティブに捉える声かけが効果的
- アンプラグドで基礎を固めてからデジタルに移行するとスムーズ
- 日常生活の中にも「順番を考える」場面を見つけて活用する
プログラミング的思考の本質は「コードを書く技術」ではなく「論理的に考える力」です。アンプラグドプログラミングは、その力を楽しく身につけるための最高の方法です。今日から親子で遊んでみてください。
外部参考リンク:



